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C-DEPOTのパトロンを訪問 (vol.03)
鳴海製陶株式会社 工場見学

Posted:KANAMARU Yuji 2009年03月07日 18:08

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「アーティストを支援したい」
C-DEPOT設立時から参加しており、現在「NARUMI」に勤務しているメンバーの登山さんとアーティストと企業のつながりについて、可能性を模索したいという話になった。それがちょうど一年前のこと。その後、連絡を重ねNARUMIが三重に構える工場の見学が実現した。

「NARUMI(鳴海製陶株式会社)」は、国内大手のセラミックスメーカーである。1911年に前身である「帝国製陶所(のちの名古屋製陶所)」が設立、その後1950年に「鳴海製陶株式会社」として独立する。経営理念に「人々の日常生活の喜びとゆとりに寄与するような事業を通して、生活文化の向上に資すること」を掲げている。

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さて、三重にある工場に向かうため、私たち(石井、金丸、堤)は名古屋に前日入りし登山さんと待ち合わせる。翌早朝に、営業開発部長の小松孝治氏と合流し電車で2時間半かけて三重県志摩市にある三重ナルミ工場(三重ナルミ株式会社)に向かった。三重県と言えば真珠の産地でも有名だ。工場に向かう車中、真珠の養殖場らしき施設を何度も目にすることができた。

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工場到着。やっぱり広い!思っていた以上に広い敷地、そして施設の数。受注管理部長の坂口美明氏と業務課長の伊藤智章氏が出迎えてくださり、工場や製品について説明をしていただいた。
製造業というのは、クオリティの高い商品を、いかに効率よくスピーディーに生産できるかが鍵となる。それは理論だけではなく、現場の人間にしか分からない「気づき」が数多く存在している。例えば工具や用具に関しても既製品に頼らず、場合によっては手作りしたり、使いやすく改造したり、経験に裏付けられた工夫を垣間みることができるのである。
「ずっとやっていると慣れてしまうから、客観的に気付いたことがあればどんどん言ってもらいたいんです」とおっしゃられ、その謙虚な姿勢からは自社の製品への愛を感じることができる。

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ところで、NARUMIといえば、まず「ボーンチャイナ」を思い浮かべる人は多いだろう。恥ずかしながらボーンチャイナが何なのか、当初私はよく分かっていなかった。
ボーンチャイナは、磁器の種類の名称であり、器の成分にボーンアッシュと呼ばれる骨灰の含有率が、30%以上のものを示すという、NARUMIのボーンアッシュの含有率は45〜47%を占める。その特徴として、一般磁器に比べ素地が薄いにもかかわらず、割れにくい点。また乳白色で透光性がすぐれている点が挙げられる。置かれた料理がおいしく見えることから、洋食器として不動の人気を博してきた。
1700年代に英国で発明された当初は実際の牛の骨を使用していたが、現代では原料である骨灰(リン酸カルシウム)は、科学的に精製できるとのこと。なぜ、英国でボーンチャイナが発展したかというと、英国では土壌の関係で土に恵まれなかったため、土の代わりの原料として牛の骨灰を利用した磁器が開発されたらしい。そんなマニアックなトリビアも、ココならではで興味深い。

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工場内部に案内していただくと、まず目に飛び込んできたのは、粘土を精製する行程。ボーンアッシュ、陶石などの原材料がタンクで調合され粘土状になる。粘土がチューブ状に切り出され、さらに「ケーキ」と呼ばれる円盤状の固まりとなり、それが積層されたかたまりが置かれていた。聞くところによるとその状態で海外の工場への輸送を行うという。

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次の施設は、成形を行う工場である。ここでは主に「ろくろ」と「鋳込み」の2種類の成形方法が取られている。ろくろといっても職人が手で一つ一つ作っているのではなく、上下で回転する型に流し込まれた生地が、機械によって圧力が加えられ、あっという間に器の形になっていく。その一連の過程がほんとに見事で、大量生産もここまでくると芸術の域なのでは、とただ感心してしまった。
もう一方の「鋳込み成形」は、泥状の生地を型に流し込む技法。固まるまで「待ち」の状態の時、いかに省スペースを図るかなど、こちらも製造過程に日常では想像もつかないような、様々な知恵が盛り込まれていた。

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あるスペースには、乾燥し待機している器が棚に並んでいた。釉薬も施されていない無垢の器たちは、まだ光沢がなく、機能性もない状態なのだが、その何も映り込まない光と陰だけの単なる物体の、なんとも不思議な存在感と造形の美しさが強く印象に残っている。

乾燥後、締焼窯によって1200℃以上の高温で丸一日焼成され、その後、釉薬(うわぐすり)が蒸気によって塗られ、再び半日ほど焼成される。こうして、ボーンチャイナ特有の透明性と光沢が備わった食器が誕生する。各工程ごとに入念な品質チェックは欠かされることはない。この時点で、すぐにでも商品として出荷できそうなものだが、その後の絵付けよって、商品の付加価値を高める行程へと進んで行く。

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「絵付」はどうやっているのか?
大量生産だから手描きってことはないだろうし、直接印刷する機械でもあるのかな…。ここに来るまでまったく想像が出来なかったが。
「え、これ全部人の手でやってたの!?」
食器にプリントされている模様や柄は、転写シートによるもの。その転写シートを水でふやかしたものを、ひとつひとつ人の手によって貼付けられていた。これが最も一般的な技法らしい。そのテクニックは見事なもので、どれも全く違わない精密な仕事である。転写シートが貼られた器は、低めの温度で数時間焼かれることによって定着する。その際に、位置の目安になる印などは消えて無くなるらしい。
通常の食器などはここで完成するが、一部の器は、ここから金仕上を施すことで更に付加価値を高め、高級洋食器へと変貌する。金は熟練の職人によって手描きで仕上げされる。もちろん金を施した後に、焼いて定着させる。その行程の複雑さと高度な技術こそが、高級食器たる所以なのだろう。

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工場見学の後、一行は、近くのウナギ店でランチをご馳走になる。
食べながらも、それぞれ業界の問題意識などについて語り合った。異業種の方と話すことは、客観的に自分を見つめるよい機会にもなる。この有意義な機会を作るために尽力していただいた、小松氏と登山さんには本当に感謝である。こうした積み重ねから、アーティストが何かを変えて行く原動力としたい。そう心に刻み、私たちは名古屋駅を後にした。(2008/9/19)

narumi_10.gif 竹本容器株式会社NARUMI(鳴海製陶株式会社)

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