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C-DEPOTパトロン訪問 アーカイブ

2007年04月26日

C-DEPOTのパトロンを訪問 (vol.01)
株式会社オーケーコーポレーション

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養豚場の敷地内、衛生面の管理が徹底されている。彼方に見えるのは榛名山。

今日は EXHIBITION C-DEPOT 2004より継続的に協賛していただいている、養豚場のオーケーコーポレーションを訪問する。晴天のこの日、車で群馬の赤城ICを降りたところで株式会社オーケーコーポレーションの社長を務める岡部氏と待ち合わせのアポをとっていた。共通の知人である画商さんを通じて知り合った岡部氏とお目にかかるのは初めて。異業種の方と接する機会はなかなかないので、こんな体験も興味深い。


みなさんは養豚場に対してどのようなイメージをもっているだろうか。もちろん、私が養豚場に訪れるのは初めてのこと。漠然と持っていた養豚場のイメージは、その圧倒的な広さに打ち消された。「え、こんなに広いの?」とまず思った。
農場の広さは10ヘクタール、俗にいう東京ドーム2個分である。車で敷地内を案内していただいたが、まるで一つの町を探索しているような感覚を陥るほど。標高は700mの位置にあり、農場を一望できる丘からは、はるか向こうに榛名山が見える。飼育しているハルナポークという品種名の由来だそうだ。
もう少し農場と飼育している豚について話しを伺った。

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肥料や水などを巨大なタンクて貯蔵している。

ここでは、およそ15000頭もの豚を飼育している、そのうち約1700頭は親豚である。特徴的な飼育方法があるのかを訪ねたところ、「普通ですよ」との返答。ただ一般的にエサにはトウモロコシを使用するのだが、ここではタピオカを多く使用しているそうだ。豚は生まれて半年で精肉されるという、それだけの期間で100kgを越える成長の早さに驚きである。 今回は残念ながら、実物の豚を拝見することができなかった、伝染病に対して非常に気を使っており、普段から一般の見学などはお断りしているそうだ。これだけの数を飼育しているのだから納得である。ここにいる豚が回り回って私たちの食卓にきているのかと思うと不思議な感覚である。

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10ヘクタールの広大な敷地。(左)、代表取締役 岡部幹夫氏(右)

美術に関して少し伺った。もともと美術との関わりはコアにあるわけではなく、たまに知人のギャラリーを見たり、展覧会に行ったりする程度だという。ひょんなことがきっかけで、C-DEPOTにご支援いただくことになった。これまでは2004年の赤レンガ、私の個展に足を運んでいただいている。また岡部氏の知人の版画専門ギャラリーをご紹介いただいたり、郵便などでのやりとりは3年以上にも及んでいる。 展覧会に対して継続的にご支援してくださる経営者と出会える機会はそうそうない。若いアーティストを支援することについて、そのお考えを尋ねたところ、「出来る範囲での協力ですよね、飲み会に数回行ったと思えば(笑)」という飾らない自然体な答えが返ってきた。「若いアーティストは別の仕事と両立しながら制作している人が多いと聞き大変だと思います。美術の展覧会も音楽のコンサートのようも気軽に足を運べるようになるといいですよね。」と当活動に対して励ましの言葉をいただくことができた。一日でもはやくそのような環境をつくれるよう、頑張らねば。

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後日送られてきた豚肉。美味。

岡部氏のように寛容なパトロンのご期待に少しでも応えるべく決意も新たに、また人とのつながりの大切さを改めて感じることができた。今日は短い時間だったが有意義な一日となった。(2007.4.5)

2009年01月11日

C-DEPOTのパトロンを訪問 (vol.02)
竹本容器株式会社 工場見学

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2007年より「EXHIBITION C-DEPOT」を支援してくださっている企業「竹本容器株式会社」の工場見学が実現した。

竹本容器は、食品や化粧品の樹脂製容器を製造している日本有数の企業である。
基本理念として“日本と世界の器文化に貢献する”ことを掲げている竹本容器は、創業以来56年の積み重ねがあり、千数百種類もの金型を誇り、どんな形、材質、要望にも対応できるノウハウがある。そしてその強みを活かしながら品質や機能のカスタマイズによって、ニーズに応えている。一番の特徴は、顧客に「レディメイド」を提供する、ということ。レディメイドとは、つまりはオーダーメイドの反対語のことである。かつてはオーダーメイドが中心だったボトルの分野で、多種多様な“既製品”を用意したことで、小ロットでの販売が可能になり、金型やデザイン開発のコスト削減、納品時間の短縮など、大きなメリットを顧客側は得ることができるようになっている。プラスチックが中心だが、ガラスやエコロジー樹脂、紙などいろいろな素材にも幅を広げている。


「工場見学」という言葉は、何とも少年心をくすぐる響きがある。待ちに待ったこの日が来た!という気持ちは日常ではなかなか味わえない。朝8時半、通勤ラッシュの時間に上野駅付近に参加希望をしたC-DEPOTメンバーが集合する。一同用意していただいた車に乗り込み、茨城県にある結城工場に向かう。移動中、今回の機会をセッティングしてくれた執行役員の竹本えつこさんに「製造過程で撮影したらまずい企業秘密とかはありますよね?」と尋ねると「何もないですよ。うちはオープンなんで」「え、いいんですか?」そんな会話のやりとりが印象に残っている。

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オープンでおおらかな社風に好感を抱きつつ、およそ2時間の移動の後に工場に到着。結城にはおよそ10000坪の敷地面積を誇る成形工場と、少し離れたところに印刷所とがある。入口付近のショールームには、これまで竹本容器が手がけた容器のサンプルがずらっと並ぶ。中には植物から精製されたプラスチック製の容器もあり、企業の環境問題への取り組みも垣間みることができる。
一行はまず応接室に案内され、製造の責任者の方からのご挨拶。一通り自己紹介のあと、簡単に企業の特徴、工場のことなどを説明していただく。製造過程の容器サンプルを見せていただき、それらの説明をうける。普段何気なく使っている容器を違った視点で見るのは、新鮮な感覚だ。企業のパンフレット、工場の図面など資料をいただき簡単に目を通す。そして皆専用の白衣?(髪の毛やホコリをまき散らさぬよう)着用。工場見学っぽくなってきた!

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記念にカシャッ

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工場内に入る前に、エアーシャワーを浴びる。体に付着したゴミやホコリを吹き飛ばす。さらにテンションが上がる。ここの工場では、「射出成形(インジェクション成形)」「中空成形(ダイレクトブロー成形)」「射出延伸ブロー成形(インジェクションシュトレッチブロー成形)」の3種類の成形方法を取っている。成形方法によって特性が異なり、例えば容器が化粧品か、飲料用ボトルか、などによってその成形機やプロセスが異なるという。

入ってまず驚くのは、衛生管理の徹底ぶり。虫やホコリなどの異物混入に対しての対策に一切の抜かりはない。100%目視によって検査しており、2日に一回は金型を交換し、磨きなどのメンテナンスは手作業で行っているという。見えない部分でも怠らない。品質と信頼を保つための模範的な姿勢にとても感心。
「このこだわりが日本のモノ作りのクオリティを支えているのだな」と妙に納得してしまう。

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内部に入るとさっそく大量の容器のキャップがお出迎え。ベルトコンベアによって同じ製品が大量に作られている様は興奮ものである。熱によってやわらかくなったプラスチックが、型にはめられ空気によって圧力を加えられ形が成形される。わかっていても、ものがつくられていく過程には見とれてしまう。端材がでても、それらは原料として再利用される。無駄を生み出さない数多くの知恵がそこにはあった。

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いくつか部屋が分かれており、成形するスペース以外にも、金型がまとめておいてある部屋、原料を保管している部屋、オンラインによってコンピューター管理している巨大な倉庫などがある。

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続いて一行は再び車に乗り込み、数分離れた印刷所へ案内される。こちらでは、成形工場で作られた容器に印刷を施す工場である。工場内に入ると、成形工場とはまったく異なる空気がそこには流れていた。圧倒的な数の人。ベルトコンベアで管理され大量に生産された容器たちが、ここでは一つ一つ人の手によって、文字や模様など印刷されているのあった。「え、これ全部人の手で印刷されていたの!?」
それが正直な感想だった。
印刷工場に入ると、グラフィックデザイナーの堤氏の目の色が変わる。やはりデザイナーにとって印刷の現場というのは最も興味深い対象なのだろう。

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印刷方法は何種類かあるのだが、ここでは主に「シルクスクリーン印刷」と「UVスクリーン印刷」そして「ホットスタンプ」がある。熱によってインクを乾燥させる「シルクスクリーン」。紫外線を当てることによってインクが硬化する「UVスクリーン」。そして、箔などを印刷する「ホットスタンプ」。容器の素材や形状、デザインなどによって印刷方法を分けているとのことだが、共通しているのはやはり人の手によってひとつひとつ印刷されていることだろう。プラスチック容器の底によくある溝が、印刷の際に位置を一定にさせる知恵だったり、今まで容器印刷に抱いていた疑問はほとんど解明されたと思う。

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私たちの日常で何気なく使用されているものが、これだけの人の手によって、作られていることを考えると容器に限らず、製造業のスゴさというものを感じざるを得ない。
工場見学後、合羽橋にある本社に訪問。企画開発部の方々とご挨拶し、竹本さんの粋な計らいで懇親会を開いていただくことに。みなさん面白すぎ。笑いっぱなしで時間が経つのはあっという間。

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解散際に皆で記念撮影カシャッ。いい感じで酔ってますな。社員さんの雰囲気の良さが、きっとこの会社の質の良さなのだろう。このような貴重な経験をさせていただき、心より感謝。
帰り際、「お互いがんばりましょう」と竹本えつこさんと固く握手を交わし、上野駅を後にした。(2008/8/8)

takemoto_11.gif 竹本容器株式会社竹本容器株式会社

公式サイト

2009年03月07日

C-DEPOTのパトロンを訪問 (vol.03)
鳴海製陶株式会社 工場見学

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「アーティストを支援したい」
C-DEPOT設立時から参加しており、現在「NARUMI」に勤務しているメンバーの登山さんとアーティストと企業のつながりについて、可能性を模索したいという話になった。それがちょうど一年前のこと。その後、連絡を重ねNARUMIが三重に構える工場の見学が実現した。

「NARUMI(鳴海製陶株式会社)」は、国内大手のセラミックスメーカーである。1911年に前身である「帝国製陶所(のちの名古屋製陶所)」が設立、その後1950年に「鳴海製陶株式会社」として独立する。経営理念に「人々の日常生活の喜びとゆとりに寄与するような事業を通して、生活文化の向上に資すること」を掲げている。

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さて、三重にある工場に向かうため、私たち(石井、金丸、堤)は名古屋に前日入りし登山さんと待ち合わせる。翌早朝に、営業開発部長の小松孝治氏と合流し電車で2時間半かけて三重県志摩市にある三重ナルミ工場(三重ナルミ株式会社)に向かった。三重県と言えば真珠の産地でも有名だ。工場に向かう車中、真珠の養殖場らしき施設を何度も目にすることができた。

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工場到着。やっぱり広い!思っていた以上に広い敷地、そして施設の数。受注管理部長の坂口美明氏と業務課長の伊藤智章氏が出迎えてくださり、工場や製品について説明をしていただいた。
製造業というのは、クオリティの高い商品を、いかに効率よくスピーディーに生産できるかが鍵となる。それは理論だけではなく、現場の人間にしか分からない「気づき」が数多く存在している。例えば工具や用具に関しても既製品に頼らず、場合によっては手作りしたり、使いやすく改造したり、経験に裏付けられた工夫を垣間みることができるのである。
「ずっとやっていると慣れてしまうから、客観的に気付いたことがあればどんどん言ってもらいたいんです」とおっしゃられ、その謙虚な姿勢からは自社の製品への愛を感じることができる。

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ところで、NARUMIといえば、まず「ボーンチャイナ」を思い浮かべる人は多いだろう。恥ずかしながらボーンチャイナが何なのか、当初私はよく分かっていなかった。
ボーンチャイナは、磁器の種類の名称であり、器の成分にボーンアッシュと呼ばれる骨灰の含有率が、30%以上のものを示すという、NARUMIのボーンアッシュの含有率は45〜47%を占める。その特徴として、一般磁器に比べ素地が薄いにもかかわらず、割れにくい点。また乳白色で透光性がすぐれている点が挙げられる。置かれた料理がおいしく見えることから、洋食器として不動の人気を博してきた。
1700年代に英国で発明された当初は実際の牛の骨を使用していたが、現代では原料である骨灰(リン酸カルシウム)は、科学的に精製できるとのこと。なぜ、英国でボーンチャイナが発展したかというと、英国では土壌の関係で土に恵まれなかったため、土の代わりの原料として牛の骨灰を利用した磁器が開発されたらしい。そんなマニアックなトリビアも、ココならではで興味深い。

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工場内部に案内していただくと、まず目に飛び込んできたのは、粘土を精製する行程。ボーンアッシュ、陶石などの原材料がタンクで調合され粘土状になる。粘土がチューブ状に切り出され、さらに「ケーキ」と呼ばれる円盤状の固まりとなり、それが積層されたかたまりが置かれていた。聞くところによるとその状態で海外の工場への輸送を行うという。

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次の施設は、成形を行う工場である。ここでは主に「ろくろ」と「鋳込み」の2種類の成形方法が取られている。ろくろといっても職人が手で一つ一つ作っているのではなく、上下で回転する型に流し込まれた生地が、機械によって圧力が加えられ、あっという間に器の形になっていく。その一連の過程がほんとに見事で、大量生産もここまでくると芸術の域なのでは、とただ感心してしまった。
もう一方の「鋳込み成形」は、泥状の生地を型に流し込む技法。固まるまで「待ち」の状態の時、いかに省スペースを図るかなど、こちらも製造過程に日常では想像もつかないような、様々な知恵が盛り込まれていた。

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あるスペースには、乾燥し待機している器が棚に並んでいた。釉薬も施されていない無垢の器たちは、まだ光沢がなく、機能性もない状態なのだが、その何も映り込まない光と陰だけの単なる物体の、なんとも不思議な存在感と造形の美しさが強く印象に残っている。

乾燥後、締焼窯によって1200℃以上の高温で丸一日焼成され、その後、釉薬(うわぐすり)が蒸気によって塗られ、再び半日ほど焼成される。こうして、ボーンチャイナ特有の透明性と光沢が備わった食器が誕生する。各工程ごとに入念な品質チェックは欠かされることはない。この時点で、すぐにでも商品として出荷できそうなものだが、その後の絵付けよって、商品の付加価値を高める行程へと進んで行く。

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「絵付」はどうやっているのか?
大量生産だから手描きってことはないだろうし、直接印刷する機械でもあるのかな…。ここに来るまでまったく想像が出来なかったが。
「え、これ全部人の手でやってたの!?」
食器にプリントされている模様や柄は、転写シートによるもの。その転写シートを水でふやかしたものを、ひとつひとつ人の手によって貼付けられていた。これが最も一般的な技法らしい。そのテクニックは見事なもので、どれも全く違わない精密な仕事である。転写シートが貼られた器は、低めの温度で数時間焼かれることによって定着する。その際に、位置の目安になる印などは消えて無くなるらしい。
通常の食器などはここで完成するが、一部の器は、ここから金仕上を施すことで更に付加価値を高め、高級洋食器へと変貌する。金は熟練の職人によって手描きで仕上げされる。もちろん金を施した後に、焼いて定着させる。その行程の複雑さと高度な技術こそが、高級食器たる所以なのだろう。

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工場見学の後、一行は、近くのウナギ店でランチをご馳走になる。
食べながらも、それぞれ業界の問題意識などについて語り合った。異業種の方と話すことは、客観的に自分を見つめるよい機会にもなる。この有意義な機会を作るために尽力していただいた、小松氏と登山さんには本当に感謝である。こうした積み重ねから、アーティストが何かを変えて行く原動力としたい。そう心に刻み、私たちは名古屋駅を後にした。(2008/9/19)

narumi_10.gif 竹本容器株式会社NARUMI(鳴海製陶株式会社)

公式サイト

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