2009年9月 7日

末宗美香子、ビオトープと出会う

Posted:SUEMUNE Mikako 2009年9月 7日 15:24

biotop_1.jpg

一度は田植えをしてみたい!
そう思っていた所、仕事でお世話になったライターのY氏より田植え体験のお誘いを受け、ゴールデンウイークに千葉県鴨川市にある「星ヶ畑棚田」で行われた田植えに友人と参加しました。
現地までは久里浜フェリー(朝1番のフェリー乗船者はほとんどがゴルフバッグを持った方々です。。。)、内房線など乗り継いで4時間近い道のり。集合場所は棚田を見下ろすお寺の境内。大人から子供まで、100人以上が集まりました。多くは東京などの都会在住者のようです。1年間に渡りいくつかのグループがここの棚田を借りて田植えから収穫までを体験できます。

biotop_2.jpg

午前9時から地元のお米農家のベテランさん達によるレクチャーが始まり、各々が指定された棚田へ向かいます。足には田植え足袋という見た事のない?不思議な履物を付け。。。(もちろん裸足でもOKなのですが)
不定形の田んぼが段々にいくつも広がり、大きな田んぼからかなり小さい田んぼまで、皆でわいわいとスタートします。

まずは泥の中にそろそろと足を。。「ひゃあ。。生温い~。でもなんとも気持ち良い~~!!」初めて見る稲の繊細さに驚き、思いがけない泥の感触の良さ、水の中に蠢くオタマジャクシ等々、、。
なんだか懐かしい気持ちに。こんなに繊細な稲がぐんぐんと成長するのかあ。。。と思うとなんとも逞しく、ありがたく感じます。
一つの田んぼに規模に合わせて6人~10人くらいが横並びになり、稲を植える目印の糸を移動させながら皆ですこしづつ進んで行きます。田んぼの土手を壊さないようにとレクチャーで指導されたにもかかわらず、おぼつかない動きのため見事に破壊。。。注意されながら土手を直したり、
デジカメを落としそうになりながらもわいわいと作業は進みます。もうちょっとやりたいなあ。。。と思った頃に全ての田植えが終了。
あぜ道を子供達が走り回る様子は「日本昔話」(TBSのアニメ)の世界。。。大人も泥にまみれて皆さん楽しそう。作業終了後は素晴らしい景色の中、お弁当や農家の方からの差し入れの夏みかんを戴きました。この稲が炎天下をぐんぐんと成長していく姿を想像しながら。。。

biotop_3.jpg

帰りに立ち寄った鴨川の道の駅で、今回の棚田のさらに奥にある大山千枚田という有名な棚田で獲れたお米を購入。このお米が大変美味でした!普通に炊飯器で炊いたのですがまったく別物?というしっかりとした炊きあがりにただただ驚きでした。

田んぼは遥か昔の人々が地形や気候を活かして考えだした人口自然がこの時代にも受け継がれていることの凄さ。完成度の高い一つの形態=稲作、を作り上げるまでの過程には、お米と同じく粘り強い人間の意志を感じます。しかも実用という目的でありながら、棚田や田んぼの四季折々の姿はとても美しくもあります。
今度訪れるのは収穫の頃。しかも収穫祭では猪鍋?バーベキュー?とか。実に待ちどおしい。。。(2009/5/3)


*棚田について
全国の散在する棚田は、その生産効率の悪さから消滅の危機を迎えています。
ですが、棚田は食料生産としての場だけではなく、その下方にある自然体系の保全など様々な役割をしているビオトープでもあります。
今回の「田植え体験」は農業の現場に趣くことで、これからの日本の未来を考えるきっかけになればと考え、株式会社クロス、有限会社ユニットクワトロが棚田を借りることによって実現しました。


biotop_4.jpg末宗美香子

アーティスト


独特の感性と色彩で、キッチュでポップな「異空間の住人」を描くアーティスト。
「ファッション」と「デザイン」を感じさせる、センスの高さに定評があり、その可能性はアートの枠に留まらない。


2009年4月 3日

"UNCHARTED" トルコ/イスタンブル 未踏領域へ

Posted:KOJIMA Ichiro 2009年4月 3日 18:34

uncha_1.jpg

2009年3月から8月までトルコの最大都市イスタンブルで開かれている、大規模なインタラクティブ・メディアアート展"UNCHARTED -User Frames in Media-"に参加するため3月中旬より2週間滞在してきた。有史以来、常に歴史の表舞台にあったこの地は「アジアとヨーロッパがぶつかる場所」と形容されるように街の中心を流れるボスフォラス海峡が西をヨーロッパ、東をアジアに隔てている。
そして、今回の展覧会もそれを表すかの様に多くの国のアーティストやクリエイター40組ほどが"santralistanbul(サントラルイスタンブル)"に招聘された。

uncha_2.jpg

"サントラルイスタンブル"は国内外の芸術文化の交流を目的に2007年9月にオープンしたまだ新しいモダンなアートセンターである。古い発電所をリフォームして作られた敷地には美術館、博物館、カフェやレストランなどがあり、Bilgi大学デザイン、映像学科のキャンパスが併設している。そしてここで研究、制作、そして展覧会やコンサートなどが行われている。
今回の展覧会では、トルコでもまだなじみの少ないインタラクティブなメディアアートを広く紹介するのが目的であり、またZKM*1などヨーロッパの主要なメディアアート施設、大学との連携を図っている。展示作品は5F建ての美術館の4フロアを使って、メディアアートの中でよく知られた代表的な作品と、逆にまだあまり良く知られていない若手の作家の作品がフロアごとに分けられ置かれており、来館者はぐるっと回ることで様々な時期とタイプの異なる作品を鑑賞することができる。

uncha_3.jpg

筆者は昨年C-DEPOT2008でも出展した"/balance"という映像を重さというかたちで経験することができるインタラクティブなインスタレーションを展示している。1週間ほどの展覧会が多い中で、今回は半年という長丁場の展示になるので作品の性質上耐久性というものをかなり考えないといけなかった。出展が決まった2月から急ピッチで作品を動かしているコンピュータのソフトウェアの部分を修正し、作品本体で動く機構部を新たに設計し直した。現在のところ正常に動いているが、これから夏まで壊れないかという心配を持ち続けるのかと思うと気分が滅入るが、それ以上に多くの人に観てもらえるという期待の方が大きい。特に筆者は何の縁だかイスタンブルは4度目の渡航であり、これまで知り合った友人たちに自分の作品を観てもらえる機会が偶然にも得られたことはなによりの喜びであった。
また同時に今回多くのアーティストやスタッフとも知り合いになることができた。驚いたのは出展者の一人に、IAMAS*2で一緒だったスイス人の友人の大学時代の同期がたまたまいたことだ。食事のときに席が一緒になって世間話をしていたときにそれが判明して、この分野は本当に狭いんだなと改めて知らしめられた。世界では6人ほどひとを介せば誰とでも、アフリカの奥地の民族でさえ辿り着けるというけれども、メディアアートの世界ではきっと2、3次の隔たりしかないのかもしれない。

uncha_4.jpg

さて、話を展覧会に戻すと前述したように、トルコにおいてメディアアートという分野、特にインタラクティブ性をもった作品は一般的にはあまり知られていないのが現状だ。イスタンブルのアートフェティスバルとしてよく知られているイスタンブル・ビエンナーレも現代美術が中心である。こうした中でヨーロッパ、特にドイツのZKMから協力を得ることで様々な作品を展示し、市民に広く知ってもらおうという動きはこれからの中近東のインタラクティブなメディアアート浸透への足がかりにはなるのではないかと注目である。個人的に言うとトルコ近代サッカーがドイツによって形成されたことと重なって興味深い。また16世紀に当時のオスマン・トルコ帝国で盛んであった素晴らしい宗教細密絵画が、西洋からきた遠近法に代表される技法に出会った瞬間と似た状況がいま訪れていると感じてもいいかもしれない。今まであまり知られていない分野の美術が地理的、文化的にも東西が混合するこの場所でこれからどのような舞台になるか非常に楽しみであると共に、今回作品を展示することで関われたことを非常に嬉しく思う。

*1 ZKM:ドイツ・カールスルーエにあるメディアアート中心とした美術館、研究所。

*2 IAMAS:岐阜県立の大学院大学と専修学校の総称。筆者が現在在学中である。

uncha_5.jpg小島一郎

web、インタラクションデザイナー


20代前半から積極的に海外のアートプロジェクトに参加し、その後企業でのwebデザイナーを経て、現在は情報科学芸術大学院大学に在籍している。C-DEPOTには設立時から参加しており、おもに広報物やwebサイトのデザインをしている

2009年3月 7日

C-DEPOTのパトロンを訪問 (vol.03)
鳴海製陶株式会社 工場見学

Posted:KANAMARU Yuji 2009年3月 7日 18:08

narumi_1.jpg

「アーティストを支援したい」
C-DEPOT設立時から参加しており、現在「NARUMI」に勤務しているメンバーの登山さんとアーティストと企業のつながりについて、可能性を模索したいという話になった。それがちょうど一年前のこと。その後、連絡を重ねNARUMIが三重に構える工場の見学が実現した。

「NARUMI(鳴海製陶株式会社)」は、国内大手のセラミックスメーカーである。1911年に前身である「帝国製陶所(のちの名古屋製陶所)」が設立、その後1950年に「鳴海製陶株式会社」として独立する。経営理念に「人々の日常生活の喜びとゆとりに寄与するような事業を通して、生活文化の向上に資すること」を掲げている。

narumi_2.jpg

さて、三重にある工場に向かうため、私たち(石井、金丸、堤)は名古屋に前日入りし登山さんと待ち合わせる。翌早朝に、営業開発部長の小松孝治氏と合流し電車で2時間半かけて三重県志摩市にある三重ナルミ工場(三重ナルミ株式会社)に向かった。三重県と言えば真珠の産地でも有名だ。工場に向かう車中、真珠の養殖場らしき施設を何度も目にすることができた。

narumi_3.jpg

工場到着。やっぱり広い!思っていた以上に広い敷地、そして施設の数。受注管理部長の坂口美明氏と業務課長の伊藤智章氏が出迎えてくださり、工場や製品について説明をしていただいた。
製造業というのは、クオリティの高い商品を、いかに効率よくスピーディーに生産できるかが鍵となる。それは理論だけではなく、現場の人間にしか分からない「気づき」が数多く存在している。例えば工具や用具に関しても既製品に頼らず、場合によっては手作りしたり、使いやすく改造したり、経験に裏付けられた工夫を垣間みることができるのである。
「ずっとやっていると慣れてしまうから、客観的に気付いたことがあればどんどん言ってもらいたいんです」とおっしゃられ、その謙虚な姿勢からは自社の製品への愛を感じることができる。

narumi_4.jpg

ところで、NARUMIといえば、まず「ボーンチャイナ」を思い浮かべる人は多いだろう。恥ずかしながらボーンチャイナが何なのか、当初私はよく分かっていなかった。
ボーンチャイナは、磁器の種類の名称であり、器の成分にボーンアッシュと呼ばれる骨灰の含有率が、30%以上のものを示すという、NARUMIのボーンアッシュの含有率は45〜47%を占める。その特徴として、一般磁器に比べ素地が薄いにもかかわらず、割れにくい点。また乳白色で透光性がすぐれている点が挙げられる。置かれた料理がおいしく見えることから、洋食器として不動の人気を博してきた。
1700年代に英国で発明された当初は実際の牛の骨を使用していたが、現代では原料である骨灰(リン酸カルシウム)は、科学的に精製できるとのこと。なぜ、英国でボーンチャイナが発展したかというと、英国では土壌の関係で土に恵まれなかったため、土の代わりの原料として牛の骨灰を利用した磁器が開発されたらしい。そんなマニアックなトリビアも、ココならではで興味深い。

narumi_5.jpg

工場内部に案内していただくと、まず目に飛び込んできたのは、粘土を精製する行程。ボーンアッシュ、陶石などの原材料がタンクで調合され粘土状になる。粘土がチューブ状に切り出され、さらに「ケーキ」と呼ばれる円盤状の固まりとなり、それが積層されたかたまりが置かれていた。聞くところによるとその状態で海外の工場への輸送を行うという。

narumi_6.jpg

次の施設は、成形を行う工場である。ここでは主に「ろくろ」と「鋳込み」の2種類の成形方法が取られている。ろくろといっても職人が手で一つ一つ作っているのではなく、上下で回転する型に流し込まれた生地が、機械によって圧力が加えられ、あっという間に器の形になっていく。その一連の過程がほんとに見事で、大量生産もここまでくると芸術の域なのでは、とただ感心してしまった。
もう一方の「鋳込み成形」は、泥状の生地を型に流し込む技法。固まるまで「待ち」の状態の時、いかに省スペースを図るかなど、こちらも製造過程に日常では想像もつかないような、様々な知恵が盛り込まれていた。

narumi_7.jpg

あるスペースには、乾燥し待機している器が棚に並んでいた。釉薬も施されていない無垢の器たちは、まだ光沢がなく、機能性もない状態なのだが、その何も映り込まない光と陰だけの単なる物体の、なんとも不思議な存在感と造形の美しさが強く印象に残っている。

乾燥後、締焼窯によって1200℃以上の高温で丸一日焼成され、その後、釉薬(うわぐすり)が蒸気によって塗られ、再び半日ほど焼成される。こうして、ボーンチャイナ特有の透明性と光沢が備わった食器が誕生する。各工程ごとに入念な品質チェックは欠かされることはない。この時点で、すぐにでも商品として出荷できそうなものだが、その後の絵付けよって、商品の付加価値を高める行程へと進んで行く。

narumi_8.jpg

「絵付」はどうやっているのか?
大量生産だから手描きってことはないだろうし、直接印刷する機械でもあるのかな…。ここに来るまでまったく想像が出来なかったが。
「え、これ全部人の手でやってたの!?」
食器にプリントされている模様や柄は、転写シートによるもの。その転写シートを水でふやかしたものを、ひとつひとつ人の手によって貼付けられていた。これが最も一般的な技法らしい。そのテクニックは見事なもので、どれも全く違わない精密な仕事である。転写シートが貼られた器は、低めの温度で数時間焼かれることによって定着する。その際に、位置の目安になる印などは消えて無くなるらしい。
通常の食器などはここで完成するが、一部の器は、ここから金仕上を施すことで更に付加価値を高め、高級洋食器へと変貌する。金は熟練の職人によって手描きで仕上げされる。もちろん金を施した後に、焼いて定着させる。その行程の複雑さと高度な技術こそが、高級食器たる所以なのだろう。

narumi_9.jpg

工場見学の後、一行は、近くのウナギ店でランチをご馳走になる。
食べながらも、それぞれ業界の問題意識などについて語り合った。異業種の方と話すことは、客観的に自分を見つめるよい機会にもなる。この有意義な機会を作るために尽力していただいた、小松氏と登山さんには本当に感謝である。こうした積み重ねから、アーティストが何かを変えて行く原動力としたい。そう心に刻み、私たちは名古屋駅を後にした。(2008/9/19)

narumi_10.gif 竹本容器株式会社NARUMI(鳴海製陶株式会社)

公式サイト

2009年1月11日

C-DEPOTのパトロンを訪問 (vol.02)
竹本容器株式会社 工場見学

Posted:KANAMARU Yuji 2009年1月11日 17:51

takemoto_1.jpg

2007年より「EXHIBITION C-DEPOT」を支援してくださっている企業「竹本容器株式会社」の工場見学が実現した。

竹本容器は、食品や化粧品の樹脂製容器を製造している日本有数の企業である。
基本理念として“日本と世界の器文化に貢献する”ことを掲げている竹本容器は、創業以来56年の積み重ねがあり、千数百種類もの金型を誇り、どんな形、材質、要望にも対応できるノウハウがある。そしてその強みを活かしながら品質や機能のカスタマイズによって、ニーズに応えている。一番の特徴は、顧客に「レディメイド」を提供する、ということ。レディメイドとは、つまりはオーダーメイドの反対語のことである。かつてはオーダーメイドが中心だったボトルの分野で、多種多様な“既製品”を用意したことで、小ロットでの販売が可能になり、金型やデザイン開発のコスト削減、納品時間の短縮など、大きなメリットを顧客側は得ることができるようになっている。プラスチックが中心だが、ガラスやエコロジー樹脂、紙などいろいろな素材にも幅を広げている。


「工場見学」という言葉は、何とも少年心をくすぐる響きがある。待ちに待ったこの日が来た!という気持ちは日常ではなかなか味わえない。朝8時半、通勤ラッシュの時間に上野駅付近に参加希望をしたC-DEPOTメンバーが集合する。一同用意していただいた車に乗り込み、茨城県にある結城工場に向かう。移動中、今回の機会をセッティングしてくれた執行役員の竹本えつこさんに「製造過程で撮影したらまずい企業秘密とかはありますよね?」と尋ねると「何もないですよ。うちはオープンなんで」「え、いいんですか?」そんな会話のやりとりが印象に残っている。

takemoto_2.jpg

オープンでおおらかな社風に好感を抱きつつ、およそ2時間の移動の後に工場に到着。結城にはおよそ10000坪の敷地面積を誇る成形工場と、少し離れたところに印刷所とがある。入口付近のショールームには、これまで竹本容器が手がけた容器のサンプルがずらっと並ぶ。中には植物から精製されたプラスチック製の容器もあり、企業の環境問題への取り組みも垣間みることができる。
一行はまず応接室に案内され、製造の責任者の方からのご挨拶。一通り自己紹介のあと、簡単に企業の特徴、工場のことなどを説明していただく。製造過程の容器サンプルを見せていただき、それらの説明をうける。普段何気なく使っている容器を違った視点で見るのは、新鮮な感覚だ。企業のパンフレット、工場の図面など資料をいただき簡単に目を通す。そして皆専用の白衣?(髪の毛やホコリをまき散らさぬよう)着用。工場見学っぽくなってきた!

takemoto_3.jpg

記念にカシャッ

takemoto_4.jpg

工場内に入る前に、エアーシャワーを浴びる。体に付着したゴミやホコリを吹き飛ばす。さらにテンションが上がる。ここの工場では、「射出成形(インジェクション成形)」「中空成形(ダイレクトブロー成形)」「射出延伸ブロー成形(インジェクションシュトレッチブロー成形)」の3種類の成形方法を取っている。成形方法によって特性が異なり、例えば容器が化粧品か、飲料用ボトルか、などによってその成形機やプロセスが異なるという。

入ってまず驚くのは、衛生管理の徹底ぶり。虫やホコリなどの異物混入に対しての対策に一切の抜かりはない。100%目視によって検査しており、2日に一回は金型を交換し、磨きなどのメンテナンスは手作業で行っているという。見えない部分でも怠らない。品質と信頼を保つための模範的な姿勢にとても感心。
「このこだわりが日本のモノ作りのクオリティを支えているのだな」と妙に納得してしまう。

takemoto_5.jpg

内部に入るとさっそく大量の容器のキャップがお出迎え。ベルトコンベアによって同じ製品が大量に作られている様は興奮ものである。熱によってやわらかくなったプラスチックが、型にはめられ空気によって圧力を加えられ形が成形される。わかっていても、ものがつくられていく過程には見とれてしまう。端材がでても、それらは原料として再利用される。無駄を生み出さない数多くの知恵がそこにはあった。

takemoto_6.jpg

いくつか部屋が分かれており、成形するスペース以外にも、金型がまとめておいてある部屋、原料を保管している部屋、オンラインによってコンピューター管理している巨大な倉庫などがある。

takemoto_7.jpg

続いて一行は再び車に乗り込み、数分離れた印刷所へ案内される。こちらでは、成形工場で作られた容器に印刷を施す工場である。工場内に入ると、成形工場とはまったく異なる空気がそこには流れていた。圧倒的な数の人。ベルトコンベアで管理され大量に生産された容器たちが、ここでは一つ一つ人の手によって、文字や模様など印刷されているのあった。「え、これ全部人の手で印刷されていたの!?」
それが正直な感想だった。
印刷工場に入ると、グラフィックデザイナーの堤氏の目の色が変わる。やはりデザイナーにとって印刷の現場というのは最も興味深い対象なのだろう。

takemoto_8.jpg

印刷方法は何種類かあるのだが、ここでは主に「シルクスクリーン印刷」と「UVスクリーン印刷」そして「ホットスタンプ」がある。熱によってインクを乾燥させる「シルクスクリーン」。紫外線を当てることによってインクが硬化する「UVスクリーン」。そして、箔などを印刷する「ホットスタンプ」。容器の素材や形状、デザインなどによって印刷方法を分けているとのことだが、共通しているのはやはり人の手によってひとつひとつ印刷されていることだろう。プラスチック容器の底によくある溝が、印刷の際に位置を一定にさせる知恵だったり、今まで容器印刷に抱いていた疑問はほとんど解明されたと思う。

takemoto_9.jpg

私たちの日常で何気なく使用されているものが、これだけの人の手によって、作られていることを考えると容器に限らず、製造業のスゴさというものを感じざるを得ない。
工場見学後、合羽橋にある本社に訪問。企画開発部の方々とご挨拶し、竹本さんの粋な計らいで懇親会を開いていただくことに。みなさん面白すぎ。笑いっぱなしで時間が経つのはあっという間。

takemoto_10.jpg

解散際に皆で記念撮影カシャッ。いい感じで酔ってますな。社員さんの雰囲気の良さが、きっとこの会社の質の良さなのだろう。このような貴重な経験をさせていただき、心より感謝。
帰り際、「お互いがんばりましょう」と竹本えつこさんと固く握手を交わし、上野駅を後にした。(2008/8/8)

takemoto_11.gif 竹本容器株式会社竹本容器株式会社

公式サイト

2008年11月16日

安岡亜蘭の海外レポート -韓国編 2-

Posted:YASUOKA Aran 2008年11月16日 17:36

yasuoka_msaf1.jpg

7月、韓国の忠清南道泰安郡(チュンチョンナムド・テアングン)の夢山浦(モンサンポ)という海岸で開催されている、第6回モンサンポサンドアートフェスティバルに参加してきました。
以前からお世話になっている、ソウルの誠信女子大学の教授で彫刻家のキム・ソンボク先生からの招待でした。会場であるの夢山浦は、キム先生の故郷であり、キム先生はこのサンドフェスティバルのディレクターをされています。日本から、現在東京藝術大学に留学されている、台湾人のテイさん、イラン人のサブーリさん、アメリカ人の彫刻家ビルさんとその奥様と共に招待作家として参加しました。みなさんとは飛行機や宿泊も一緒だったので、なんだか久しぶりの修学旅行のようで楽しかったです。
ソウルへ着いた翌日、誠信女子大学へ向かい、キム先生や学長先生、彫刻科の教授をされている先生にごあいさつをして、学食で昼食をごちそうになり、車何台かにわかれて夢山浦に向けて出発しました。夢山浦はソウルから車で3、4時間かかるので、着いた頃には日がかげりはじめていました。

yasuoka_msaf2.jpg

夕方から誠信女子大学の彫刻科のみなさんやキム先生の知り合いの先生方が続々と集まり会場近くの食堂で食事会が始まりました。海が近いからか新鮮な魚介類中心で、意外と思われるかも知れませんが、お刺身もたくさんで、とてもおいしかったです。
2 次会では宿泊するホテルの敷地内でアナゴのバーベキューをいただきました。前回のレポートでも書きましたが、韓国のみなさんはとてもお酒が強いです。次の日が彫刻を作る本番だというのに、教授のみなさんが率先して飲んでおられました(笑)。日本からの作家陣は2次会で失礼したのですが、みなさんは明け方近くまで飲んでいたようです。なんともパワフルですね!

yasuoka_msaf3.jpg

翌日、いよいよ本番の日、どこからか民族衣装を着た太鼓奏者達が踊りながら演奏を始め、祭りのムードを盛り上げています。
今年のテーマは「癒しの海」。実はモンサンポでは昨年、タンカー事故により原油が海に流出してしまい、今年のサンドアートフェスティバルも開催できるかわからない状態だったそうです。市民ボランティアによる地道の努力のおかげで、再びきれいな海に戻ったそうです。韓国のみなさんの団結力、行動力、見習いたいものです。

yasuoka_msaf4.jpg

さて、中々難しいテーマで、何を作ろう?と悩んだのですが、招待作家の中で唯一平面作家の私、ここは高望みせず、まず完成させることを目指して波に乗るイルカを作ることにしました。キム先生の助手さんが一人、アシスタントとして手伝ってくれたおかげで、なんとか完成させることが出来ました。キム先生の大学は女子大ですが、大学院からは男子も入学できるそうです。このフェスティバルでは、招待作家の他は一般参加者で人数も自由なので、大勢チームは迫力のある作品も多かったです。


キム先生は審査員なので、ご自身は作品を作っていませんでしたが、久しぶりに会う地元の友人たちととても楽しそうに過ごされていました。また、作家として生まれ育った場所で貢献されていて、あらためて尊敬できる先生だなぁ、と感じました。私もいつかそんな活動ができた...と思った2008年の夏でした。

yasuoka_msaf5.jpg 安岡亜蘭

アーティスト


和の要素とメカニカルな要素を融合させた、現代的な平面作品を制作する。
多くのコレクターからの熱い支持を誇る人気作家、最近では海外展示のオファーも多い。
C-DEPOTでは第一回から出品している。